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Sakura Koretsune | Okigatari - Talking Over Offshore -

是恒さくら|沖語り - オキガタリ -
May 6, 2017 - June 25

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*English follows Japanese

・会期:2017 年 5 月 6 日(土) – 6 月 25 日(日)
・オープニングレセプション:5 月 6 日(土)17:00 – 19:00
※ 毎週土曜日、日曜日 12:00 – 18:00 オープン(その他の日時はアポイントメント制)

Open Letter は、アーツ千代田 3331 への移転後の最初の企画展として、是恒さくら個展『沖語り – オキガタリ – 』を開催します。
広島県出身の是恒さんは、アラスカ州立大学を卒業後、2015 年より山形県に移住、今年 3 月に東北芸術工科大学大学院修士課程を修了しました。現在は、山形県上山市の共同アトリエ「工房 森の月かげ」で制作活動を続けています。

是恒さんは、現代社会で見過ごされがちな地域の古くからの習わしや文化を取り上げ、現地での丹念なフィールドワークとインタビュー取材を行い、テキストとともに刺繍や織物、立体作品、それらをまとめた冊子として作品をつくっています。

2015 年より継続的に発行しているリトルプレス『ありふれたくじら』では、これまでにアラスカの先住民文化、宮城県牡鹿半島、和歌山県太地町といった異なる地域の捕鯨文化を取り上げ、クジラにまつわる地域ごとの文化、態度の多様性と共通性を描き出すことを試みています。
 

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リトルプレス『ありふれたくじら』。クジラにまつわる様々な人々の物語が、是恒さんによる刺繍作品とともに綴られる。

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『ありふれたくじら』のための刺繍作品。是恒さんにとって刺繍は、「ちりぢりになった布きれ(様々なクジラにまつわる物語)を縫い合わせ、美しく生まれ変わらせる」ためのものだという。

本展では、『ありふれたくじら』と刺繍作品の他に、日本各地とアラスカの沿岸部に暮らす人たちから聞いた昔話が基になった『空想玩具シリーズ』を展示します。このシリーズは、世界各地の玩具には漁や狩猟の作法を小さな遊びから教えるものがある、ということをヒントに、是恒が各地で聞いた多様な海の生き物との体験談を後世に伝えるための想像の玩具を作るというもので、その素朴でユーモラスな造形と、添えられたテキストの活き活きとした語り口がとても魅力的です。
その土地で語り継がれる世界観を空想を媒体に再び語り、共有し、思いをはせること。異なる時代、土地の日常とひとつの地平でつながろうとすること。そうした是恒さんの作品を、ぜひご覧いただければと思います。

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みっとえきどのけん玉:鯨髭、毛皮、糸、木材 / 2015 年 / 50 cm

「このへんではミットセイとかオットセイとか呼ぶんだけど、オットセイはみんな見てるな。おれも何回も見てる。あいつらは漁の網には入らないんだ。昔、みっとえきどとか、イケスク、っていう商売があったんだ。オットセイが2頭も3頭もいると、ここらでメロードって呼んでるよく肥えた魚をうまく追い込んでまとめるんだ。餌になるから。追い込まれた魚が塊になって海の上の方に上がってくるから、そこを狙って網ですくって魚をいただくっていう商売があったの」(宮城県・網地島)

 

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くじらとふねのがらがら:鯨髭、サメの腸、魚皮、木材 / 2016 年 / 30 c

「捕鯨船に乗ってた頃の話で、一番思い出に残ってることがある。船長室の上の機関室で、仕事をしてたんだ。あったかくなって寝てたら、夢のなかで鯨が船と競争してた。それが正夢だったの。鯨を探す見張り役はみんな遠くを見てて、船のすぐ下だから見えなかったんだけど。俺がグルーっと船を回して、砲手がどーんと銛を撃ってとったんだ。結構大きなナガスクジラだったな。その時乗ってた船と変わらないくらい」(宮城県・牡鹿半島)

 

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うみがめさまのがらがら:動物の腸、米、布、鯨髭 / 2015 年 / 19 cm

「ウミガメっつうとね、昔は定期網さ、ちょくちょく入ってさ。そうすっとここの人はお酒いっぺぇ飲ませて、放してやんだ。酒好きなんだって、亀っつうのは。ほんと、体がみな赤くなんだっけよ。そういう覚えあるなぁ。鶴は千年、亀は万年ってさ、そういうたとえがあっから、大事にしたわけ。漁師は。だから結局、酒飲ませて、そして放してやる。そういう意味でねかったのかな」(宮城県・網地島)

 

『空想玩具シリーズ』は、その素朴でユーモラスな造形と、添えられたテキストの活き活きとした語り口がとても魅力的です。
その土地で語り継がれる世界観を空想を媒体に再び語り、共有し、思いをはせること。 異なる時代、土地の日常とひとつの地平でつながろうとすること。 そうした是恒さんの作品を、ぜひご覧いただければと思います。

 

本展によせて:

浜辺に立ち、遠く沖を見渡す。つま先を誘うように、小さな波が寄せては返す。
頬にまとわりつく潮風を吸い込むと、海はほんの少し、わたしに入り込む。
目の前に広がる海のなかでは、無数の生き物たちが上へ下へ、北へ南へと動き続けているはず。どこかに彼らが姿をあらわさないかと、海面に目を凝らす。
数年前から、海辺のまちを訪れては、そこに暮らす人たちの話を集めてきた。
生涯、漁師として生きてきたおじいさん。生まれた時からずっと、海を見てきたおばあさん。鯨を捕っていた人、食べていた人。
わたしが遠くに見ていた沖を、ずっと近くに知っている人たちだ。
そんな人たちの話す言葉を集めて、反芻しながら沖を眺めると、手の届かなかった海の世界は饒舌に語り出した。
沖を知る人の、物語 ― わたしの出会った「沖語り」に、かたちをもたらし語り直します。


是恒さくら

 

 

作家略歴

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  • 1986年 広島県生まれ
  • 2017年 東北芸術工科大学大学院デザイン工学専攻地域デザイン研究領域 修了
  • 2010年 アラスカ州立大学フェアバンクス校 卒業 (Bachelor of Fine Arts: Painting)

主な展示・受賞歴

  • 2017年
    • 「鹿画廊 2017」会期03 「ありふれたくじら|牡鹿半島~太地浦」(個展|宮城県石巻市・ cafeはまぐり堂)
  • 2016年

    • 「鹿画廊 2015-2016 冬」会期03 「ありふれたくじら」(個展|宮城県石巻市・cafeはまぐり堂)
  • 2015年

    • 第4回 都美セレクショングループ展「東北画は可能か?―地方之国構想博物館―」出品(グループ展|東京都美術館)
  • 2013年

    • 京都府美術工芸新鋭展 2013京都美術ビエンナーレ 入選(グループ展|京都文化博物館)
    • 「創造新話 -post-creation myth-」(個展|広島県広島市・18帖の空間。mosaic)
    • 「つみくさ」(個展|広島市・広島芸術センター)
  • 2012年

    • 第64回広島県美術展 奨励賞(グループ展|広島県立美術館)
  • 2010年

    • “Vanishing Points” (個展|アラスカ州立大学)
    • “Duhesa Lounge Exhibition” (グループ展|コロラド州立大学)
  • 2009年

    • “Skin Sisters and Countenance” (グループ展|Bunnell Street Arts Center、アラスカ州ホーマー)
    • “Countenance: Modern Masks of the North”(グループ展|Bunnell Street Arts Center、アラスカ州フェアバンクス)